2006年01月22日

大切なものは形骸化し -書道家葛空の随筆-

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雪の
「書の至宝−日本と中国」展



   人は大切なものから先に失ってゆく。失ってはいけないものから先に。
 何故。そう問わざるを得ない。残された者は日々の生活を根こそぎ持って行かれて、同じ場所であるにもかかわらず変わってしまった風景にとまどう。
 大切なものにもっと注目させるためなのか。ゴミは出さないようにしていればいい、出てしまった物はしょうがないので始末するだけ。深く考えなくてもいい。そういう事なのか。
 もう、言葉もない。楽しかった事も短い期間で幕を閉じ、まるで財布にあったお金が必ず無くなっていくように、一つ一つ無くなっていく。必ず無くなるのなら増やそうとする意欲もなくなっていく。増えるだけ悲しい。
 手の中の何が次に消えていくのか。おお、私は今度何に注目するのか。あれなのか、それともあれか。恐ろしい。財布の中身なんて増えなくていい。もう、うんざりだ、止めてくれ。
 そうは言ってみたものの、素晴らしいものには又めぐり会ってゆくのだろう、そして又失ってゆくのだろう。じっくり見つめさせてもらうさ。私から何が出てきても、悲しくないわけなんてあろう筈がないのは、当たり前の事なのだ。楽しくなる事がもしあるとすれば、間違えて裏返ってしまった時だけだろう。そっちの方が多かったりして。

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