2006年10月04日
書道作品 創作 「結廬在人境・・・」
結廬在人境 而無車馬喧
問君何能爾 心遠地自偏
採菊東籬下 悠然見南山
山氣日夕佳 飛鳥相與還
此中有眞意 欲辨已忘言
=陶淵明(とうえんめい)=
廬を結びて人境に在り
しかも車馬の喧(かまびす)しきなし
君に問う何ぞ能(よ)く爾(しか)るやと
心遠くして地も自ら偏なればなり
菊を採(と)る東籬(り)の下(もと)
悠然として南山を見る
山気日夕(にっせき)に佳く
飛鳥相與(とも)に還(かえ)る
この中(うち)に真意有り
弁ぜんと欲して已(すで)に言(げん)を忘る
○結廬―いおりをむすぶ。
問君―己を離れて己を呼ぶので、
淵明自らいうのである。
南山―廬山のこと。
山気―山のけはい。
○引退後の我が家はまちなかにあるのだが、
車馬の騒音もなく静かだ。どうしてだろう。
―それは私の心境が俗事から遠ざかっているので、
ここの場所まで自然と偏僻
(へんぺき・都から離れた片田舎)になるんでしょう。
菊を東のいけがきのあたりで手折り、
視線をゆっくり南に移すと、
廬山のたたずまいが目に入る。
あの山はいいね。
朝晩の山気がすばらしいな。
夕方になると鳥たちが還って来るんだ。
こうした現在の私の日常と環境には
深い何ものかがあるのだが、
それを説明しようとすると、
いつしか、
表現なんかどうでもいい
という気分になってしまうのだ。
○淵明はふつう田園詩人といわれるが、
なまやさしくない。
練度の極めて高い詩境、心境である。
私なりに感じたこの詩の世界を
楷書(一部行書っぽい)で表現してみた。